東京高等裁判所 昭和43年(ネ)462号 判決
〔前出〕証拠を総合すると、被控訴人女屋は本件事故当時被控訴人繩と親しく交際していたことから、被控訴人繩の雇人である岡部の使用していた井上とも顔見知りとなり、親しく話をすることもあつたこと、被控訴人女屋は事故発生直前その所有にかかる本件軽自動二輪車を前橋市萱町六番地岸自転車預り店前の道路上にエンジンの鍵を差し込んだまま駐車させておき、右自転車預り店内で友人と話していたところ、井上が右道路を通りかかつて被控訴人女屋の右軽自動二輪車を見つけ、被控訴人女屋に対して「ちよつと車を貸してくれ」と申し入れ、これに対して被控訴人女屋は「免許を持つているか」といつたところ、井上は「持つている」と答え、さらに同被控訴人は井上がサンダルを履いていることに気づいて、「高崎ハムのところにお巡りが交通整理をしている」旨を告げ、井上は「大丈夫だ」と答えて右軽自動二輪車を運転して行つたが、同被控訴人においてこれを制止しようとしたわけではなく、結局、井上が本件軽自動二輪車を使用することを承認したものであることが認められ、原審における被控訴人女屋の本人尋問の結果中右認定に反する部分は信用できないし、他に右認定を動かしうる証拠はない。
右事実によれば、被控訴人女屋は知人である井上の依頼に応じて本件軽自動二輪車を一時的に同人に使用貸したものというべきである。ところで、自動車損害賠償保障法第三条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」とは、一般に当該自動車の運行支配と運行利益の帰属する者をいうと解されており、当裁判所もこの見解を採るものであるが、本件のような一時的な使用貸借の場合であつても、被控訴人女屋の右貸与による間接的利益を右にいう運行利益というに妨げなく、また、借主井上を通じての間接的支配も右にいう運行支配と解して差支えないから、この意味において被控訴人女屋をもつて同条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」に該当するというべきである。したがつて、同被控訴人は同条により本件事故に基づく損害の賠償義務を負うものである。
(青木 高津 弓削)